血液型人間学は疑似科学である


能見正比古氏、俊賢氏の提唱する血液型人間学は、第三者による検証を受けておらず、また、第三者による検証が可能な形で発表されていないがゆえに、科学であるとは言えない。
進化論と創造論に戻る
遺伝学からみた血液型性格判断に戻る

血液型性格判断には科学的根拠があると信じられている背景には、1970年代に能見正比古氏が提唱した血液型人間学があると考えられます。父、能見正比古氏とともに、血液型人間学が広く知られるきっかけをつくった能見俊賢氏は以下のように述べています。

あえて声を大にしてくり返しておくと、実用情報としての「血液型人間学」は、血液型と人間の行動思考性との関連を、さまざまなアンケート調査、血液型分布率調査などによって統計学的に観察分析する自然科学であり、星座や生年月日、十二支などを用いる占いなどとは、まったく縁もゆかりもない分野である。 (能見俊賢、血液型ウォッチング P15)

血液型人間学は自然科学なのだそうです。しかし、能見親子の説は、自然科学者の間で受け入れられていません。国際的な雑誌で議論になったことすらありません(注)。科学の重要な特徴の一つに、相互チェックがあります。ある科学者が「この仮説は正しい」と主張しただけでは、その仮説は受け入れられません。他の科学者によって検証されることによって、その仮説は受け入れられていきます。

こうした、相互チェック・第三者による検証を保証するために、いくつかの基本的なルールがあります。まず、実験や調査法、研究の対象を明確にしていないといけません。得られた結果と、その結果からの考察をはっきり区別しないといけません。血液型人間学では、例えば「O型は欲望の表わし方が極めてストレートで、自己主張が強い」 などと主張されますが、たいていはその根拠、つまり、「どのような対象に、どのような調査を行なって、どのような結果が得られたから、このような考察を行なった」のか、という情報が欠落しています。

科学者が仮説を提唱し、第三者の検証を受けるには、論文として発表する必要があります。通常は論文が掲載されるにあたって、まず査読者といって、第三者の科学者によるチェックが入ります。そこで、論理的な誤りはないか、データに不十分な点はないか、などがチェックされます。査読者と雑誌の編集者からOKがもらえて初めて、論文が雑誌に掲載されます。掲載自体は論文の正しさを保証するものではなく、これからの第三者による検証のはじまりしか意味しません。

こうした手続きを経ていない場合、第三者による検証は難しいものになります。能見親子は多くの一般書を書いていますが、学術的な論文を一報でも書いたという話は聞きません。能見親子の一般書を読んでも、上記したように調査法・対象が明確でなく、結果が明示されていないこともしばしばで、考察なのか著者の思いつきなのか不明な記述であふれています。にもかかわらず、

断定できることは、今や血液型と人間性との間に、大きな関係の実在することが、一点の疑う余地なく実証されたということである。史上初めて人間の行動に、科学的な基準が与えられたのだ。 (能見正比古、新・血液型人間学 P4)

と断言しています。しかし、第三者による検証がなされていない以上、実証されたとはとても言いがたいのです。創造科学臨床環境医学に関しても同様ですが、一般書のみで展開され、第三者による検証が困難な主張については、懐疑的になるべきです。血液型人間学は、科学的な基準を満たしていません。にもかかわらず科学を自称しているという点で、疑似科学だと言ってよいでしょう。


(注) 血液型と性格の関連を論じた論文は少ないながらある。しかし、能見学説を引用しているわけではない。報告された血液型と性格の関連については充分な再現性は認められていない。


参考文献

草野直樹 「血液型性格判断」の虚実 かもがわ出版
能見正比古 新・血液型人間学 青春出版社
能見俊賢 血液型ウォッチング 廣済堂文庫

ご意見、ご要望がございましたら、掲示板か、 e-mail:natrom@yahoo.co.jpへどうぞ。


遺伝学からみた血液型性格判断に戻る
進化論と創造論に戻る
2002/10/16