湖底に刻まれた過去

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湖の堆積物を利用することで、炭素14法による年代測定法の信頼性をチェックできる。年代測定法は原理の異なった複数の方法で相互チェックされているが、若い地球の創造論者はそのことには言及しない。

過去をより詳しく知るための科学者の努力はとどまるところを知りません。創造論者の信仰とは関係なく、地球の歴史についてさまざまな知見が積み重なっていっています。氷河や鍾乳石、川によって侵食された地形、地層の重なりや岩に含まれる放射性同位体元素に隠された秘密を科学者は解き明かします。

湖の底に積み重なった泥が、過去の貴重な情報を教えてくれることをご存知でしょうか。サンゴ礁のぶ厚い石灰岩層が歴史を語るように、湖底の堆積物もまた歴史があるのです。国際日本文化研究センターの北川浩之助手とグローニンゲン大(オランダ)のJ・ヴァン・デル・プリフト助教授が1998年にサイエンスで発表した論文によれば、なんと45000年前までさかのぼることができるのです。日本の福井県の水月湖の湖底は、酸欠のため攪拌する生物はいません。そのため、湖底には春は白いケイソウが、それ以外の季節は暗色の泥が堆積します。湖底をボーリングしてサンプルを採取し、その断面を顕微鏡で見ると縞模様が見え、木の年輪のように年代を読み取ることができます。

この湖底の堆積物を利用することで、炭素14法による年代測定をより正確に行うことができます。過去の大気中の炭素14の割合が一定であるとみなしている科学者は、もはや創造論者の空想の中にしか存在しません。炭素14法とは異なる独立した方法で年代を測定することで、過去の大気中の炭素14の割合が推定できます。これまでも過去10000年ぐらいまでは年輪法によって補正は行われてきましたが、年輪法ではそれ以上さかのぼるのは難しかったのです。

他に、サンゴ礁で炭素14法による年代測定と、U-Th法(ウランの崩壊を利用する)による年代測定を組み合わせて得られた補正法もあります。この方法は年輪法よりもずっと過去にさかのぼれますが、注意すべきことは、サンゴ礁での放射性炭素年代は過去の海洋表面の炭素14量を反映しているのであって、大気中の炭素14量はわからない点です。深海の循環などの条件が変われば誤差が大きくなります。

湖の堆積物であればこの問題はクリアできます。堆積物の中の葉や小枝、昆虫の羽根には炭素が含まれています。縞模様を数えて得られた「暦年代」と、炭素14の割合を調べて得られた「放射性炭素年代」を対比させることができます。横軸に「暦年代」、縦軸に「放射性炭素年代」をプロットすればグラフが得られます。このグラフを利用することで、10000年より古い資料でもより正確に年代測定をすることができるようになります。

45000年前までの暦年代と放射性炭素年代の対比のグラフ 図1.水月湖の45000年前までの暦年代と放射性炭素年代のグラフ。横軸が暦年代。縦軸が炭素14の量を測定して得られた放射性炭素年代。38000年以降の黒丸は堆積速度一定の仮定による。緑の線は年輪法、赤はサンゴ礁のU-Th法(三角バルバドス、円ムルロア、四角パプアニューギニア)(Kitagawa、1998)

ある年代測定法がどれくらい信頼できるかは、独立した別の測定法と比較することでチェックできます。炭素14による年代測定法のほかに、ここでは湖底の堆積物を利用する方法、年輪法、サンゴ礁のU-Th法が使われています。10000年前近傍はこの3つの年代測定法によるデータがそろっているので、相互比較できます。

10000年前近傍の暦年代と放射性炭素年代の対比のグラフ図2.水月湖の10000年前近傍の暦年代と放射性炭素年代のグラフ。青丸は堆積物による年代測定、緑の線は年輪法、赤のシンボルはサンゴ礁のU-Th法(Kitagawa、1998)

年輪法と堆積物による年代測定がオーバーラップしている年代では両者はよく一致しています。サンゴ礁によるデータも同様です。ここでは示していませんが、2000年2月のネイチャーの論文でも水月湖以外に、ポーランドのゴシャツ湖、ペレスピル湖の堆積層から同様の結果が示されています。

「地球の年齢は6000年である、炭素14法による年代測定は信頼できない」と主張するのであれば、いったいなぜ独立した3つの方法でこんなにも一致した値が得られるのか、説明する必要があります。賭けてもいいですが、今後創造論の本が書かれるとしても、まともな科学者によるこういう研究には言及しないでしょう。信仰に科学的根拠があると思い込めればいいのであって、「信者」はまともな科学者の努力など知る必要はないのですから。そして科学者の努力と成果と関係無く、炭素14法による年代測定は信頼できないというウソをあいも変わらず垂れ流すでしょう。

ここで紹介したのは、年代測定法の誤差を少しでも減らそうとする科学者たちの努力のほんの一端です。そして、この研究によって放射性炭素年代の誤差を減らせるだけでなく、過去の炭素14量を推定することで、かつて炭素循環や宇宙線の量がどうだったかという情報も得られるのです。湖底に刻まれた歴史書のページを一枚ずつめくっていく労力は大変なものだったでしょう。しかしそのページからは過去の海洋循環のことすら読み取れるのです。


参考文献
Kitagawa,H and van der Plicht,J. Atmospheric radiocarbon calibration to 45000 yr B.P.:late glacial fluctuations and cosmogenic isotope production, Science VOL.279,P1187-1190 20 Feb.1998
Goslar,Tomasz et al.,Variations of Younger Dryas atmospheric radiocarbon explicable without ocean circulation changes, Nature VOL.403,P877-880 24 Feb.2000

Webサイト
放射性炭素による考古学年代測定 http://www.kyoto-np.co.jp/kp/topics/98feb/80220.html
泥のバーコードが歴史を語る! http://www.yahoo.co.jp/edu/keisetsu/99032602.HTM

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2000/03/11
2005/08/30最終改訂