少子化を進化生物学で考える

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紫藤ムサシ先生によれば、「放って置いても、自然に少子化は解消する」とドーキンスも言っているそうです1)私もドーキンスの著作は一通り目を通しておりますが、そのようなことをドーキンスが言っていたなど知らなかったので、コメント欄で先生に質問してみましたところ、以下のようなお答えがありました。

 7 家族計画  184〜185p
 ・・・子をたくさん産みすぎる固体が不利をこうむるのは、個体群全体がそのために絶滅してしまうからではなく、端的に彼らの子のうち生き残れるものの数が少ないからなのである。・・・
 ・・・しかし、現代の文明人の間では、家族の大きさが固体の親たちが調達しうる限られた諸資源によってはもはや制限されないという事態が生じている。
 ある夫婦が自分たちで養いきれる以上の子供を作ったとすると、国家、つまりその個体群のうち当の夫婦以外の部分が断固介入して、過剰な分の子供たちを健康に生存させようとするのである。
 物質的資源を一切持たぬ夫婦が、多数の子を女性の生理的限界まで産み育てようとしても、実際のところこれを阻止する手段はないのだ。
 しかし、そもそも福祉国家というものはきわめて不自然なしろものである。・・・
 子供に対する生活保障の特権は決して濫用されるべきものではないのである。・・・
 彼らが多数の子を作るよう意図的にけしかけている指導者や強力な組織については、その嫌疑をとくわけにはいかないと私には思われる。

 と書いてあります。
 これを
 「少子化は自然に解消する」
 と読めなければ、あなたの知力・理解力を疑わざるを得ません。
 「書かれていない要旨を読み取る」
 のは読者の知力です。
 それが出来ないなら"評論"は成り立ちません!

まったく先生の言う通りです。私は知力が足りなかったので、「書かれていない要旨を読み取る」ことができませんでした。申し訳ありません。しかし恐れながら申し上げますと、ドーキンスのあの文章から、「少子化は自然に解消する」という要旨を読み取ることのできるような並外れた知力を持っているお方は、先生以外にはほとんどいないと思います。おそらく、進化生物学者(ドーキンス自身を含む)で、先生ほどの知力を持つ者はいないでしょう。

先生の知力はあまりにも並外れているがゆえに、先生が専門家に要求するレベルも高いのです。先生は、「進化論学者」「動物行動学者」「生物学者」で、"少子化で日本の人口がどんどん減る"などと言っている者は一人もいませんと言っています。たとえば、長谷川眞理子は厚生労働省の社会保障審議会の人口部会委員になって少子化対策を論じていますが2)、先生の基準からすると、まだまだ進化論学者とは言えないのでしょう。ちなみに、愚かな私は、長谷川眞理子は進化生物学者ではないのか、と突っ込んだのですが、

長谷川真理子氏については知りませんでした。竹内久美子さんも「科学的事実よりもイデオロギーを優先する学者が多数いる」と言っていましたから、その類でしょう。
cover
■進化と人間行動 長谷川寿一・長谷川真理子著。進化生物学から現代社会を読み解きたいのなら読んでおくべし。教科書だから読んで面白いようには書かれてはいない。

という先生のお答えでした。この時点でムサシ先生がただの馬鹿右翼ではないことが明白になりました。どんなに馬鹿であっても、とりあえず検索してみるぐらいはするでしょう。「長谷川眞理子」で検索してみれば、彼女が進化生物学について多くの著作を書き、とくに人間の社会行動における進化生物学的な考察が専門であることがわかるでしょう。少子化を進化論で論じている日本人の進化生物学者として、まっさきに名前があがってくるのが長谷川眞理子です。ただの馬鹿右翼であっても、「長谷川眞理子を知らない」と言ってしまうのはまずいということぐらいは理解できるはずです。

ましてや、進化論・生物学で現代政治・社会を読み解こうとしている先生が、長谷川眞理子を知らないはずがありません。先生がサイドバーで推薦している「社会生物学の勝利」の訳者も彼女です。先生の真意は、竹内久美子を援用して現代社会について語るのがいかに愚かであるのかを、我々に悟らせることにあるので、わざと知らないフリをしたのです。上記引用したほんの2つの文だけで、

を表現する先生のパロディ能力は卓越しています。残念なことに、上記引用したコメント欄のやり取りは今では削除されています。おそらく、右翼の中にいくら馬鹿がいるといっても、ここまで際限のない馬鹿は存在しないがゆえにリアリティを損ねると、先生は判断されたのだと思います。他にも先生に批判的な幾人かのコメントも一緒に削除されたのですが、「自分に都合の悪い発言を封じるファシスト」を表現されているのであります。確かに、こういう馬鹿はよくいますよね。中途半端に削除しているために、後からコメント欄を読むと不自然であるところにリアリティがあります(参考:掲示板でのゆーさんのコメント)。


ご意見、ご感想のある方は掲示板へどうぞ。反対意見を「ストーカー」と決め付けて削除したりしませんのでご安心を。
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2005/11/30作成
2006/01/10最終改訂

引用元URLリスト
1) http://houkoku.air-nifty.com/busi/2005/10/post_e13a.html
2) http://www.mhlw.go.jp/shingi/0108/s0807-2a.html